陶磁器と文鳥と作劇塾
作劇塾の塾生です。塾での日々、及びアンティークや陶磁器類、そして文鳥の雑文
読書感想文

時間が足りんとか叫びつつも、読んでしまうのが本。

仕方ないです。桐野夏生の新作だったんです。そして装丁が鴨居玲だったんです。

物凄い吸引力なんですよ『早よ読め』と。

 

「猿の見る夢」講談社刊です。

59歳のおっさんが主人公です。銀行から出向した先のアパレル会社が、思いのほか急成長して役員になっております。ちょっとしたエリート生活満喫中。

 

妹夫婦と同居している母親が亡くなったら、その土地を相続して二世帯住宅を建てようと夢を見ています。10年来の愛人アリ。彼女は美人でカネモチ。

でも主人公、一方では清楚な会長秘書も気になっています。

そして仕事面では、社内での処世術に最近悩み中。会長につくか、その娘婿の社長につくか……そんな日々を送っているある日、家の中に見知らぬ女が! 妻が連れてきた占い師。しばらくこの家で同居して、妻の悩みを占ってもらうとのこと。

 

ある日、会長に呼び出されて、社内の一大事を相談される主人公。何と娘婿の社長がセクハラ! うまく立ち回れば、オレ、娘婿を蹴落として、社長の椅子も狙えるか?

しかし、セクハラ問題は裏がありまして、そうはいかないものです。

え~それが真相? 「やばいんじゃない、それって!」とばかりに、事件の裏で糸引く女の言い分に、呆れるやらの主人公。

 

そして、ついに亡くなった主人公の母。

さあ、遺産を分配しようとする主人公に、親の介護を任せきりにしていたくせに、なにをずうずうしいと、主人公夫婦を糾弾する妹夫婦。

どうなる、夢の二世帯住宅!

 

さて、上手くいっているのかいっていないのか、上がったり下がったりの主人公の日々。

謎の占い師が指し示す主人公の運命は? 

 

つくづく、この人の描く人間造形はたまりません。

ケチで小心者、そのくせ小狡い。自分勝手で利己主義の、超・俗人たちが織り成す世界。人間の美点とか愛だとか、そんなものは一切抜き。

もうね、この方の作品は、自分の持っている言語化しにくい真っ暗闇を、丹念にメスで腑分けして、一つ一つ、分かりやすく標本にして見せてくれる、そんな作風。

『グロデスク』なんて名作ですね。美醜の分かれた姉妹の心の闇を描いたお話。

東電OL殺人事件がモチーフになっていることで有名ですが、それ以上に、人間諦めが肝心ということを私に教えてくれた作品。

 

読んで、つくづく思う。

凄いなあ、どこまで行けば、こんな話やキャラクターを動かせるんだろうな。

 

 

 

スポンサーサイト
コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
http://miho1130929.blog.fc2.com/tb.php/190-2a8814b5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック