陶磁器と文鳥と作劇塾
作劇塾の塾生です。塾での日々、及びアンティークや陶磁器類、そして文鳥の雑文
失われた週末

ビリーワイルダー監督。


10日間ほど酒断ち出来たアル中小説家志望の主人公。


面倒見の良すぎるお兄ちゃんが、週末、弟に健康的生活を送らせるために、一緒に旅行しようと計画。

しかし、当日に自分の恋人が一人で演奏会に行くと知って「出発するまでの間に、演奏会を楽しめ」と、お兄ちゃんを無理やり同伴させ、掃除のおばさんのお給金を酒代のためにネコババして脱走。

お兄ちゃんは怒って主人公の弟を残して旅立ち、恋人は気をもみながらもお仕事へ。


金曜日から日曜日まで(?)監視員不在のアル中男の週末を描いた作品。

いや~酷いわ。酒代のために、盗みはするわ酒をたかるわ、挙句の果ては作家の生命線、タイプライターを質に入れんと町中をさまよい、行きつけの飲み屋に押し付けていくし。


しかし、キチンとスーツを着て、ネクタイをしめた酔っ払いなんですわ。

酔っ払いの戯言は、とろれつの回らない口調で鼻歌と愚痴と決まっているのですが、この酔っ払いが口に出すのはシェイクスピアや誌的な文章だし。

いかんなあ、せめて家具破壊とストリートファイトくらいしないと……と思ったのですが、いかんせん、酔っぱらい方がダンディすぎる。

アル中の怖さを描いているとすれば、少々物足りないぞ。

読売新聞社会面の『伴走記』の方が、社会生活の崩壊の仕方が半端なくて迫力よ。


最後は自殺しようとします。

こともあろうに、恋人が眠っている間に、彼女の毛皮のコートを持って出て質に入れ、以前に質に入れた自分の銃を、質草から出すのです。


おい!!人のコートを勝手に質に入れるくらいなら、もう首吊りにしろ!!


しかし、小説家志望ならば、この主人公には、大なり小なり同情できるはずでしょう。

主人公、大学時代はヘミングウェイの再来と天才と呼ばれた小説家志望。

大学を中退してから小説を書くも、全然売れない。

お兄ちゃんに何から何まで世話になり、生活能力なし。

酒を飲んで、そのイマジネーションで書こうとあがく男。

うっわー、書けないのか。

確かにいやだよなあ、あの焦燥感。

誰かに言われたとか、笑われるとかそんなではなくて、目には見えない相手に対する敗北感。

あると思っている才能が、実は無いのよという失望感……というより、虚無感ね。


いやだなあ、私も書き出しが決まらんのよと、アル中主人公に身につまされながら、約30センチのフランスパン一本、ハンバーグ煮込みとチーズで赤ワインを一本空ける私。


ラスト、死なれるよりはいいと、主人公の自殺を止めんがために、主人公に酒をすすめる恋人。

酒の海に溺れ、夢も希望も無くなったと叫ぶ主人公に、押し付けられたタイプライター持って現れる、馴染みの飲み屋のご主人。

タイプライターが戻ってきた。これで書くことが出来る。


最後、酒の入ったグラスの中に、吸っていたタバコを入れる主人公。

小説を書こうとあがき、アル中となった自分の苦しみを書こうと、小説にしようと決意するのです。



結局のところは、恋人の愛と、馴染みの飲み屋のご主人の優しさで立ち直る……のかな? という希望の見えるラストですけど。


……書けなくなって、酒に溺れ、才能も目標も見失った主人公の叫びが、ちくちくと心の痛いところを刺してきたせいで、食後の『どんべえ』を食べる気を無くした映画でした。








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