陶磁器と文鳥と作劇塾
作劇塾の塾生です。塾での日々、及びアンティークや陶磁器類、そして文鳥の雑文
駄文更新

それは裏六甲の山の中。


私はあの時、所持している飲料水がほとんど残り少なくなっていた。後はコップ一杯くらい。

飲料水の自販機が置いてある、休憩ポイントまであと500メートル。

これを何とかしてもたさねば。

照りつける太陽。

滴り落ちる汗。喉が渇いて仕方がない。この水を一気に飲み干せば、また乾きがくることは明白。


山登りのトラブルで、熱中症や脱水症状は、下手したら命取りです。

山の中で誰かが通りがかってくれるとは限らないし。


「……で、そこで流れている沢の水を飲んだんですよ」

社内での昼食です。私と同席しているのは、仲良くない女性上司、我が主任。

「ここ脱水症状起こすわけにはいきませんから、リアル六甲のおいしい水って事にしましたよ。ついでに顔を洗って、頭に水をかぶって冷やしましたわ」

「確かその後、キミ、川に落っこちたんだっけ?」

「ほほほ、しかもですよ。後で川の傍に看板がありまして、読んでみたら『この川の水は飲料に適していません。大腸菌うようよです』なんて書いてやがるの。ははは、大腸菌うようよを飲んじゃいましたよ。大腸菌で顔を洗っちゃって、お肌のコンディションも心配ですよ」


しかも、その川べりでカエルを踏みそうになるのでした……うわわ、飲んだのはカエルの泳いでいた水……


「もう、山登りは秋までストップします。カエルと大腸菌をセットにして、山に立ち向かおうとは思いません……しかも日焼けしちゃうし。日焼け止め塗っても焼けるなんて、山の紫外線の強力っぷりは、敵軍の連合艦隊ですよ」


唐揚げ定食を食べながら、しくしくと訴える私。

「根性無し」主任。

そうは言われてもねえ、と私。


「お肌と胃腸とカエルには勝てません」

「何が『山登りとモノカキ、どっちを愛しているんでしょう』だ。つくづくキミの愛は自分本位だな。いいかね? 愛というのは、陶酔と喜びのみが存在しているとでも思ってんのか? 愛とはそのモノを直視し、現実として受け入れる苦しみもあるんだぞ。相手に対する幻想と現実を重ね合わせ、己のココロを修正していく作業が愛というもんであろうが。キミの言っている事は、幻想のみたらふく食って、現実を直視しない、正にマンガ読みすぎ妄想肥大の女子高生の頭の中だぞ。ご都合主義という名の高原に、ハッピーエンドいう肥料を垂れ流した変なお花が狂い咲きじゃね? 山好きとは、大腸菌もカエルも蛇も紫外線も、全てひっくるめて愛している、もっと器の広い人種だ。何がお肌だ、オタンコナス」


相も変わらず、ボロカスですな……負けず嫌いがうごめくではないか。


けっ、分かったよ、誰が止めるかよ。

登ってやるよ山。

今年中にアルプス登るぞ、文句あるか。


と、言い返そうとした私に、主任はトドメ。


「さてはキミ、王子様はトイレ行かないと思っているタイプだろ」


すげえな、主任。当たり前じゃんか。


そう言う訳で、あと一回は登ります。


次は大量に水を持って行こう。

そしてカエルのいない山を目指すぞ。


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