陶磁器と文鳥と作劇塾
作劇塾の塾生です。塾での日々、及びアンティークや陶磁器類、そして文鳥の雑文
へたれですが、何か?

職場にて。

この時期になりますと部下と上司の雑談の中に、「いつ頃長期休暇を取るのだね?」という話題が混じります。

休暇を取りやすく、の職員福利厚生の一環ではありますが、同時に仕事段取りのため、事前聞き込みでもある、念のため。

「7月にでも、アルプスにでも登ろうかと思っているのですがね」

女性上司の管理主任との会話。

アルプスにはカエルがいる気がしない。

でもって、この時期のアルプスは正に登山愛好家のハイシーズン。

崖から滑落しようが、クマに遭遇しようが、周囲の助けの手は遭難者を今か今かと順番待ちのような気がする。


滑落する前に、救助ヘリは空を旋回して良そうな気がするし、救助隊ならぬご近所の自営団はわらわらと山の中をハイキング、きっと脱水症状を起こす前に、咽喉が渇いた時点で、リアルアルプスのおいしい水を、冷えたコーラかポカリスエットが差し出されそうな気がするの……なぜなら、私は妖艶な人妻だし……きっとそうよ……と思っている私。


ふうんと意外そうな管理主任。

「山登りにはまっているというからさ、てっきり冬山に登ると思っていたよ……八甲田山とかさ」

どえらい名詞を出しますね、主任。

ご存知ですか? あそこ、日本史上最悪の山岳遭難事故を起こした山ですよ。

しかもですねえ……と叫ぶ私。


「あー知ってるよ、旧日本軍が起こしたんでしょうが。ロシア相手を想定しての訓練だったっけな。兵隊さん、ほとんど死んじゃったんだよね。映画にも小説にもなってるし。怪談話も多そうだね」

「その通りです。主任、シャレにならん話があります」

言葉に力を入れる私……新耳袋に収録された話を読めば、本能的に分かりますよ。

この話と、地名はやばい、と。

そう言う訳で、やですよ。

何かあったら、どうするんです?

「さすがはへたれね、キミ」

「ヘタレだからこそ、怪談を楽しむんです! 怖がりじゃない人種が『恐怖』を味わえますかいな」

抗議する部下、ふんと鼻を鳴らす上司。

「分かっているよ、んなもん……大体、キミのプチ遭難を楽しむ登山スタイルで理解できるさ。その超ヘタレさ加減、まさに怪談を愛好するに相応しい」

なんじゃい、それ。

「アドレナリン放出型とは違うってことよ。純粋に山と命のやり取りを楽しむタイプなら、命がけスリルぎりぎりアドレナリン放出絶好調、ロッククライミングに行っているわい。しかし、キミは真逆、あくまで安全地帯を確保したうえで行う『足元ヒヤヒヤタイプ』真逆よね」

「……」

「冬の八甲田山がヤバいことくらい、そりゃ知っているさ。何せ上官の無謀な命令下で、過酷な状況下に陥って、山で狂い死にする人もいたんでしょうが。そりゃあ、キミのような万年桜満開危機管理皆無の登山好きなんて、八甲田山における罰当たりのロックフェスティバル」

……最後の一文、意味不明です、主任。

「怪談好きは、アドレナリン放出タイプではなく、足元ヒヤヒヤを楽しむ『ヘタレ型』が最も好ましいってことよ。実況見分よりも、想像力を楽しむ。これね」

「……」

「まさに、キミは怪談好きに相応しい。鑑といえよう……そう言う訳で、休みどうするのさ?」


そこまでいわれちゃあねえ。

「中間休みは、夏って事でお願いします」

あいよ、と主任。よろしく、と私。


ところで、言っておきますが……主任。


私がロッククライミングに挑戦しないのは、ヘタレが原因ではなくて、友達がいないからです。


初心者には、崖をよじ登るのを助けてくれる相棒、熟練者が必要なのです!


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