陶磁器と文鳥と作劇塾
作劇塾の塾生です。塾での日々、及びアンティークや陶磁器類、そして文鳥の雑文
へたれと遭難

アルプスへ行くことに決めたので、上司に報告。

休暇申請の根回しです。

組織に生きる人々にとって、報告書の提出期日と仕事の締め切りと、休暇のスケジュールは、きちんと上司に報告しなくてはならないホウレンソウ。

他の人たちの休み調整もありますからな。幸いなるかな、他の人たちとも休みはかぶっていません。

「あーいいよ」

我が女上司・主任、あっさり通す。

「冬までに、まとまった休みとっとけって言ったの、私だしさ。どこ行くの?」

「本格的登山デビューです。アルプス縦走、うふふ」

へぇ、と主任。ですので、と私。

「当分、私の前で『落ちる・滑る・転ぶ』という言葉を口に出さないでください。ゲンが悪い」

「ナーバスな受験生か?キミは」

「初挑戦は、どんなことでもナーバスになります」


独りですよ! と私。

いくら私が遭難愛好者としても、遭難する場所はちゃんと選ぶぞ! 近所の六甲山とアルプスを一緒にすれば、深田久弥が化けて出て、『山と渓谷』編集部員から付け狙われる!


「あー大丈夫大丈夫、キミならダイジョーブ」

ひらひら手を振る主任。へ? と私。

「何だかんだ言っても、キミのようなヘタレ臆病がアルプスという大舞台で遭難するもんか」

……その口調、部下の不安を取り除く優しさは皆無ですけど。主任。


「遭難というのは、危険察知能力がやや鈍った時か、ある程度の実力を備えた慢心から引き起こすケースが大半じゃんか。ヘタレは慢心の反対側にいるし、危険察知能力過剰が臆病なんだろ」

まあ、そうですね。

「稜線を歩くにしても、キミなら突風で滑落したらどうしようってんで、ほふく前進で行きそうだし」

ほふく前進とは失礼な……あっても四つん這いだ。


「いくら遭難愛好者を名乗ったとしても、所詮、キミは六甲山どまりの人間よ。その器の小ささでは、アルプスなんてとてもとても」

口をひん曲げる私。ふんと笑う主任。

「口惜しかったら、富士の樹海で遭難してみろ」

……受けていいのか? その勝負?

悩む私。その時、近くにいたのは人格者の課長。

「遭難も良いけど、休み明けはちゃんと出勤してくださいね」


その時、私の心が決まる。

アルプスのお土産はナシね。


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