陶磁器と文鳥と作劇塾
作劇塾の塾生です。塾での日々、及びアンティークや陶磁器類、そして文鳥の雑文
何で堕ち…いや、落ちた理由。

それは、接待帰りの夜だった。

堺筋にある店で客を見送った男は、酔い覚ましに北浜駅まで歩く。

真夜中である。

ドシュウ町に差し掛かった時、実家が薬局である彼は、ふと思い出した。

このすぐ傍には、薬の神様をお祀りした神社がある。

酔いもせいもあるのだろう、彼はちょっと寄ってお参りしようと思う。

角を曲がった。今は製薬会社のオフィス街であるこの街に、真夜中の人通りは全く無い。

ビルとビルの間に鎮座している、真っ暗な狭い路地の奥。

月明りの下に、鳥居がある。

そして、こんな夜中に参拝者がいた。ご神木が、参拝者の姿と一緒に発光しているように見えた。

……神社には、ドム、ドムという音が鈍く響き……


「ドシュウ、じゃない(ドショウ)道修町じゃあ!!」まず、先生絶叫。

えー、大坂手のひら怪談、何故キミの作品は落選したか? という問題点を探る授業の模様です。

まず、落選者……いや、書き手が自ら塾生や先生の前で原稿を朗読します。

音読すれば、リズム感や描写の感覚が露わになるのです……て、わけで読んだところ、あら、そうですか『どじょうまち』『ドショウマチ』でしたか。

どうりで漢字変換しにくいと思った。


「どうして大阪のオフィス街のど真ん中で、丑の刻参りするんですか? 人里離れた神社でするもんでしょ。鞍馬とか……」

「だって京都のあそこ、有名じゃん。でも北浜あたりは晩の22時過ぎたら人いないもん。真夜中の大阪オフィス街なら、秘密の儀式の穴場だと思ってさ」

「堺筋に通行人は夜中もいますって! だって私、あの辺りよく歩くもん!

「第一、大阪ど真ん中ですよ? 終電もなくなった真夜中に、白い着物着て、ろうそく乗せた五徳を頭に乗せて歩いてりゃ、その場で警察に通報ですよ!」

「終電……やっぱり、丑の刻参りにはタクシー使って通うしかないんでしょうか」

「だとすれば、真夜中に白装束でタクシーに乗って来るその女は、タクシーの運転手さんの間で話題になるでしょうね……きっとあだ名は『丑の刻ねーちゃん』ですよ」


『ゴメン、運転手さん。これから私、丑の刻参りやねん。私の事、見んかったことにして!』

『ちょっと、お客さん、車降りる時に頭にのっけた五徳、車の天井にぶつけんといて……あ、ちゃんと避けていきはったわ。慣れたもんやな』


落語新作・丑の刻ねーちゃんが始まる。


「つうか、何で藁人形に釘を打つ音が『ドム、ドム』やねん。フツーは『カーンカーン』やろ」

「えー我が家の壁に釘を打った時の音を参考にひねってみました」

「ご神木と、集合住宅の壁の響きを一緒にするなあ!」


大阪のど真ん中、オフィス街のなかにある神社で丑の刻参りなんて、発想の仕方がおかしいどころか、迷宮に入っているぞという指摘。

ついに新作落語『丑の刻ねえちゃん』が出来る始末。

「何故落選したのか?」と落選作についての問題点を検証する授業において、あの時の塾生の頭に浮かんだ言葉は、この一言にあったと断言できる。


そら、堕ち……いや、落ちるわ。













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